DiaryYumiko Sakuma

オンライン・ヘイトのこと

DiaryYumiko Sakuma
オンライン・ヘイトのこと

先日のポストに、2018年を「オンライン・ヘイトの年」と読んでそれによって人生が変わってしまった人たちの声を紹介するワシントン・ポストの記事を紹介したけれど、それ以来ずっと、オンラインで他者を攻撃したり、脅しを送ったりするヘイターたちがどういう人たちなのだろうかと考えていた。

そこへちょうど、春名風花さんの「有名税」と題したポストがタイムラインに流れてきた。彼女のことは、Twitterで人気になった頃からフォローしているけれど、攻撃する大人たちに向き合う姿にいつも勇気をもらっていた。そしてこのポストを読んでとても悲しい気持ちになった。自分の意見をはっきり言うことで、画面上だけでなく、現実社会でも、オンラインのヘイトが高じて歯止めが効かなくなった人たちに翻弄される羽目になった春名さんは、自分のやりたいことや周辺への気遣いから、「なるべく目立つ意見を発信しないように、注意を払って発言してゆきたい」と決断した。

このポストの後ろには、実際にハラスメントをした人たちの影がちらつく。脅しやヘイトの言葉を書いて、気持ちがいいのだろうか。すっきりするのだろうか。怖がらせてやっていると思うのがうれしいのだろうか。憂さが晴れるのだろうか。相手も生身の人間だとなぜわからないのだろうか。

アメリカでは、ときどき、マイノリティに罵声を浴びせるレイシストの映像が大拡散する。オンラインの正義派たちが、彼らのアイデンティティを見つけ出し、晒されたレイシストは仕事を失ったり、逮捕されたり、自分たちが罵声を浴びる対象になったりする。差別主義者が制裁を受けるのを見て、ざまあみろと思う気持ちは否定できない。人種差別に立ち向かう多くの善意の人々の姿に、頼もしく気持ちもある。けれど同時に、「ヘイターが制裁を受ける」という構図は、ヘイト撲滅という結果につながらない気がして暗くなる。2018年、アメリカでオンラインの世界が、例を見ないほどのヘイトで溢れたのだとしたら、それに対して社会は何ができるのだろうか。

最近、オンラインで白人至上主義者たちから嫌がらせを受けたアメリカン・ユニバーシティの黒人女性の生徒会長が、嫌がらせの首謀者を訴えて、和解に応じた。和解の条件には、ビデオと文章で公に謝罪すること、1年間にわたりアンチ・ヘイト・トレーニングを受けることなどが含まれていた。もしかしたらこういうことに可能性があるのかもしれない。

備忘録:インターネット・トロールの和解案にアンチ・ヘイト・トレーニング(Associated Press)